本土復帰50年の節目に放送された NHK 連続ドラマ小説「ちむどんどん」には、沖縄ならではの料理がたくさん登場しました。沖縄の独特な食文化は、私たちの健康を守ってくれているのと同時に、多くの沖縄ファンを惹きつける魅力の一つでもあります。
このような沖縄の食文化が、健康に良い様々な食材によってなりたっていることは食べ物に興味のある方ならよくご存じだと思います。
沖縄県では⻑年、研究者や公的機関によって健康素材に関する調査研究がされてきており、数々の書籍や報告書が発行されています。
このことは全国のヘルスケア業界でも注目されており、業界紙最大手の健康産業新聞(発行:インフォーママーケッツジャパン)にシークヮーサーやウコン、もずくなど38種類の沖縄産の健康素材が大々的に紹介されています。
健康産業新聞 第1670号(第Ⅱ部 別冊沖縄)2019年6月19日
では、どうして沖縄には健康素材がたくさんあるのでしょうか?3つの理由が考えられます。
まず一つには、沖縄は日本で唯一の亜熱帯性気候の県であるということです。熱帯と温帯の境界にあって、年中温暖。そして強い陽ざしが降り注ぐ島でもあります。こうした環境の中で、植物は紫外線や潮風、虫や細菌類から身を守るために、抗酸化物質や薬理作用を持つ物質を作り出すと考えられます。
次に、沖縄が海に囲まれた離島県であるということがあげられます。沿岸や近海には様々な海洋生物が生息し、これが貴重な水産資源になっています。また、真水と海水が混ざり合う水域では独特な生態系をもつマングローブ林が広がっています。沖縄は常に塩分を含んだ海風にさらされ台風にもみまわれます。こうして海のミネラルが陸上の植物にも供給されたり、強い風に耐えるために食物繊維が豊富なしなやかな体をつくっているとも考えられるでしょう。
そして最後の理由が、琉球王国・大交易時代の歴史です。中国や東南アジア、朝鮮、日本との交易を通して薬用植物が沖縄に持ち込まれました。ウコンはその代表例です。琉球王朝時代の医学者であった渡嘉敷 親雲上(ぺーちん)通寛は、中国に留学して「食医」を学び、『御膳本草』という食物の効能に関する専門書を書いています。御膳本草には、現代の沖縄の食生活で利用されている食材や、⺠間療法として利用されてきた薬用植物が収載されています。
「亜熱帯性気候」「島しょ地域」「琉球王国・大交易時代」という三つの条件が重なることで、沖縄は他県とはまったく異なる健康素材王国になったと考えることができます。そしてもう一つ大事なことは、沖縄の人々が自然や文化、歴史を誇りとし、命を大切にしたいという気持ちを持ち続けてきたからこそ、先人の知恵である“ぬちぐすい”が現代的なスタイルになって今の時代に受け継がれているのではないでしょうか?
(一社) 沖縄県健康産業協議会 専門コーディネーター 照屋 隆司(日本臨床栄養協会認定 NR・サプリメントアドバイザー/農学修士)